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【彫刻刀研ぎ解説】切れない刃先はこうなってます!

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彫刻刀が切れない!
そう感じた時の刃先の状況をしっかり把握している人は
実際そう多くないのかもしれません。
あんなに切れていた刃先がどうして切れなくなったのか。
どうしたら切れるようになるのか。。。

これまでもいくつか研ぎに関しての記事や動画をアップしてまいりましたが
今回はいろんなパターンの切れない刃先の状態をクローズアップ。
それぞれの拡大模型を作成しましたので、それらを使って解説します!


営業キカイ謹製。MDFの板を削って塗装して作りました(笑)

まずは基本知識。
刃先の呼び名を思えておきましょう!

1、正常な状態(切れ味良好)



刃先に欠けが一切ない状態。

刃裏も真っ平。

横から見ると刃表、刃裏とも平&平。
まずは弊社が皆さんにお渡しする時の、切れ味良好な状態です。
刃裏、刃表ともにほぼ平面で研がれており、刃先はバフで仕上げられ、欠けのない状態です。
研ぎ角度は大体20度前後にて研がれています。

2、刃先に微細な欠け



正常な状態との比較。プツプツと欠けがありますね。


彫刻刀を使用していくと、いくら硬い鋼を使用しているとはいえ刃先に微細な欠けが発生してまいります。
刃先をルーペなどで拡大して見ると微細な欠けが確認出来ますが
肉眼での確認が難しい場合は、木材を木の目の横方向に彫りましょう。
切れる状態なら彫った跡はきれいですが、筋が入ったり白くなったりむしれたり、
粉っぽい切りくずが出る場合は、対処が必要です。

切れ味落ちて木材がむしれながら切れている状態(あまりよくない)…

→対処方法
ミニハイスケアーで仕上げをかける

微細な欠けならミニハイスケアーでなくすことが出来ますので
丸ッ刃(後述)にならないようにだけ注意し、ミニハイスケアーをかけましょう。

3、研ぎ目が残っている




ダイヤケアーや粗目の砥石で研いだ跡などに見られる状態です。
「研いだのにますます切れなくなった!」というお声をよく聞きます。
切れなくなったから荒研ぎからやり直した、ということかもしれませんが
荒めの研ぎ目は「欠け」とほぼ同じ状態なので、取り払わなければなりません。

「細かい欠けがあるもの」との刃裏比較。欠けのている部分の数に差はあれど、似た状態です。

→対処方法
細かい研ぎ目で均してからミニハイスケアーをかける

研ぎ目が残っているのは、まだ「研ぎの途中」と思ってください。
そのあともう少し細かい目の砥石を当て、ミニハイスケアーで仕上げれば
必ずや切れ味が蘇ります。

4、二段研ぎ





刃先が急激に鈍角になっているので、刃先が短くなっているのがわかります。
刃先の数ミリ部分だけが急激に鈍角になっている状態です。
ミニハイスケアーやダイヤケアーに、刃先だけ極端に立てて当てられると発生します。
刃表は1、でも説明した通り平面でかつ適度な角度(20度前後)で研がれていることが切れる刃物の条件です。
刃先だけ直せばいい、とミニハイスケアーやダイヤケアーに刃先を鈍角に当てると
切れ味のいい研ぎ角度から大幅に外れ、ともすれば「刃がついていない」という状態にまで陥ってしまいます。

→対処方法
荒研ぎ~中研ぎをして新たに刃をつけ、ミニハイスケアーをかける。

荒研ぎ~中研ぎは、刃表の平面部分が砥石の面に密着するように乗せ
刃先が当たるまで根気よく研ぎ下ろしましょう。
埒が明かないな、と思ったら弊社の研ぎに出しましょう!

研ぎ直し依頼はこちら → 彫刻刀の研ぎ直し(道刃物商品に限る)

5、丸ッ刃





左が正常、右が丸ッ刃。刃先が丸い分刃表の研ぎ面積が狭くなってます。

これもよくある症状です、丸ッ刃。
刃表の鎬から刃先までが曲線で出来た面になっており、刃先が鈍角になっている状態です。
丸ッ刃になっていると、切れはするが切りくずが小さい(刃先鈍角なので食い込み悪い)
極端に悪い場合滑って刃が入らない感覚になります。
原因としては、これまで相当数ミニハイスケアーに当てられたか、
砥石で研ぎ直しする時に押した時は鎬部分、引いた時は刃先を当ててしまう
いわゆる「ブランコ研ぎ」をしてしまい、刃表全体が丸くなってしまった状態です。

「ブランコ研ぎ」の横から見た図。感覚で研ぐとどうしてもこうなりがち…

→対処方法
荒研ぎ~中研ぎをして新たに刃をつけ、ミニハイスケアーをかける。

対処方法としては4、と同じですが、二段研ぎに比べて
刃表の平面部分が少なくなっていることが多いです。
丸くなった刃表の中腹を起点に研ぎ下ろしされるとよいでしょう。

6、裏垂れ



左が、裏が垂れている状態。

裏の端っこの方が大きく減って(垂れて)いるため、
刃表側をいくら平らに研いでも「平丸」のようになっちゃいます。

こちらは、ミニハイスケアー使用歴が長い熟練さんの研ぎ直し依頼品によくみられる症状です。
平面でなければならないの刃裏の刃先が垂(だ)れてしまい
結果的に刃先の研ぎ角度が鈍角になって切れ味が低下するというものです。

原因としては、刃裏にミニハイスケアーを多く欠けすぎたり、
砥石に刃裏面を立てて研いでしまった、ということが考えられます。

→対処方法
裏垂れがなくなるまで刃表の荒研ぎ~中研ぎをし、ミニハイスケアーをかける。
(場合によっては裏押しが必要な時も)

裏の垂れた部分がなくなるまで刃表を研ぎ下ろします。
しかしながら、裏垂れ部分を刃表の研ぎだけでなくそうとすると
同じく刃先が鈍角な丸ッ刃のものを研ぎ直すよりもはるかに研ぎ下ろす必要があり
彫刻刀の寿命がより短くなってしまいます…

↑刃先が同じような鈍角でも、丸ッ刃と裏垂れでは研ぐ量がこんなに違う!

「刃裏を研ぎ下ろせばいいのでは?」という考えもごもっともなのですが、
刃裏は刃物の命である「鋼」で出来ており、その大事な部分を無駄に
擦り減らしてしまうことになります(最悪なくなっちゃうことも!)。
裏垂れは大体が刃先近くで起きているので、刃表の研ぎ下ろしにて除去し
最後に仕上げをかければ切れ味は復活するはずです。
刃表を研いで刃裏の垂れがなくなればいいのですが、垂れがひどい場合や
裏切れ(刃裏の平面部分が刃先で途切れること)が起きた場合は
やむを得ず刃裏を研ぐこともあります(裏押しといいます)。
自分の研ぎ直しでは埒が明かないな、と思ったら弊社の研ぎに出しましょう!

研ぎ直し依頼はこちら → 彫刻刀の研ぎ直し(道刃物商品に限る)

以上のように、裏垂れはロクなことがないため、研ぎ直しをして直ったら
その後は刃裏に必要以上にミニハイスケアーをかけすぎたり
刃裏を砥石に立てて研いだりしないよう、再発しないように心がけるのも大事です!

**********

ほかにも切れない原因はいくつか考えられますが、稀なものばかりなので今回は割愛します。
今回のご説明が、研ぎがどうもうまくいかないなという時の参考になれば幸いです!

研ぎに関しては、過去にリリースした仏師・あんどぅさんとの対談や 研ぎ直しの動画も是非ご参考ください。

道刃物×仏師・あんどぅななせ「研ぎマスターへの道」

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