フィギュア造形作家・竹谷隆之さん。

高い造形レベルと独特なデザイン力で、国内外かかわらず熱狂的なファンが存在します。

近年ではシン・ゴジラのデザインを手がけたことでも話題に。

「リボルテックタケヤ」シリーズでは四天王や風神雷神など仏像をモチーフとしたフィギュアも手掛けておられます。

弊社とはひょんなことからご縁がつながり、何度か工房に足を運びました。

今回は台湾での作品展直後でお忙しいにも関わらずお時間を頂き、刃物についていろいろとお話を伺いました。

本日のゲスト：竹谷隆之さん

高校の頃にあまりのカッコよさに衝動買いしてしまったFF8のディアボロスのフィギュア。
思い返せばあれが初めて手にした竹谷さん造形の作品だった。。。

竹谷さんの工房にはこれまでのお仕事の作品は数多く並ぶ。ファン垂涎の光景ですね！

竹谷

今日はようこそうちの工房へ。よろしくお願いいたします！

本日はよろしくお願いいたします！台湾の作品展（※1 記事末尾参照）お疲れさまでした。すごい人気だったようですね。

キカイ

竹谷

おかげさまで。コロナウイルスもなんとかまだ大丈夫な時でスムーズに帰国もできてよかったです。

近々玄光社さんから書籍も発売（※2 記事末尾参照）されるそうで、内容が楽しみです。購入します！

キカイ

竹谷

ありがとうございます。これまでお仕事させていただいた雛形などを中心にまとめたものになります。中国語の翻訳版も？なんて言う話もいただいてるんですが、それほど売れるのかと心配です(笑)

あの作品展の様子を見たら、欲しがる方はたくさんいらっしゃるんじゃないかと！

キカイ

「いい感じの材料ないかなー」とお持ちになったエポキシパテの塊。
今回はこれを彫りながらの取材となりました(笑)

実際に彫刻刀でエポキシパテを彫ってみて

竹谷

（彫刻刀を手に取り）やはり職人さんの作る刃物はオーラがすごいですね！

ありがとうございます！そう言って頂けると職人も喜びます。

キカイ

竹谷

今まで刃物はバリバリ使って切れなくなったら砥石やヤスリで刃先整えて、もうどうしようもなくなったら買い替えて、という感じだったんですがやはりいい刃物を使うと、切れ味の違いに驚きますね。

刃物というとどのメーカーも同じと思われがちですが、長年仏像彫刻師や能面制作のお客様と情報交換をして培われてきた刃物なので、そう言って頂けると嬉しいです。竹谷さんほとんどスパチュラ（へら）で造形を進めていかれますもんね。彫刻刀を使う時っていうのはどういった時ですか？

キカイ

竹谷

エポキシパテの芯をバリバリ削って整える時はノミでやりますが、たまに原型の仕上げで繊細さを要するところや撮影の際に画像が寄りになる場合は彫刻刀でやることもありますね。細かいところまで見られる場合や手にとってみられる作品はできるだけ丁寧に、とは思っています。

竹谷さんの作品、大物が多いですもんね。

キカイ

竹谷

今彫っているこの材料はエポキシパテなんですけど結構粒子が荒いので大根おろしみたいなヤスリでバリバリ加工出来ます。

鬼おろしみたいな(笑)　確かに軽くて彫りやすい素材ですね。

キカイ

使用刃物：デバナギ

竹谷

いやこれほんとバリバリ彫れる。

刃先が普通の木彫用の彫刻刀と比べて鈍角なので、欠けにも強いです！

キカイ

竹谷

いつまでも彫っていられそう(笑)

刃先がハマグリ刃（丸く研いである）なので直線よりもソフトな刃触りですよね。

キカイ

使用刃物：マルケン

竹谷

これは両刃にもなってるからどちらの方向も使えますね。

そうですね。そしてこちらのマルケンはケンナギの刃先を丸く研ぎ直してあるので、刃先で丸溝を造形出来るようになっています。

キカイ

ちなみにマルケンとデバナギは、どちらも原型師の林浩己さん（※3  記事末尾参照）の監修によるものです。

キカイ

竹谷

林さんかぁ、なるほど！

はい、大変お世話になっております。

キカイ

竹谷

林さんはほんと、仕事が細かいですよねぇ。

林さんのような小スケールのフィギュア原型を得意とされる方には、彫刻刀のようなしならない刃物がバッチリだとおっしゃっていました。

キカイ

竹谷

スカルピーである程度作ってエポキシパテに変換して、という作り方なら、彫刻刀は最適でしょうね。スパチュラよりももっと解像度の細かい表現が出来ると思います。

モデレッジ以外の彫刻刀も、可能性を秘めている

使用刃物：ハイスビュラン

これ最近出た、木口木版画用の刃物でビュランというのですが。

キカイ

竹谷

普通の三角刀と違って、なるほどこれも面白い溝が彫れますね。

使用刃物：ラビーナイフプロ

そしてこちらは元々消しゴムはんこ用に作ったデザインナイフなのですが、贅沢にもハイスを使っているので原型制作にも使えるかなーと。

キカイ

竹谷

細い！鋭い！　面も削れるけど、これは穴の内ぐりなどにもよさそうですね。

薄刃で両刃の繰刀のような感じなので仏像の光背などにも便利かと思います！

キカイ

道刃物と竹谷さんの出会い

そういえば竹谷さんとの出会いは、ある能面師さんの作品展で偶然お会いしたのがきっかけでした。その後、工房にお邪魔させて頂いて、そのままたまたまご近所で開かれていた仏像彫刻教室展にご一緒させて頂いたり。

キカイ

竹谷

そんなこともありました(笑)　仏像彫刻はよかったですね。

教室展だから生徒さんが一生懸命頑張って作られた作品が並んでいて、苦労もだけど楽しく作っているんだなという感じもヒシヒシ作品から伝わってきましたね。

キカイ

竹谷

仏像彫刻は難しいでしょうね。粘土みたいに盛り直せないから。

いや、でも私も一度スカルピーに挑戦したことあるんですが、気を抜くとさっき作ったところを指で押しつぶしてしまってて…。竹谷さんの動画（※4  記事末尾参照）を拝見して真似したんですけど、あんな風にスパチュラですいすい造形するのはやはり凡人には無理なんだなーと実感しました(笑)　粘土は粘土の難しさがあります。

キカイ

竹谷

ああ、あの動画。またずいぶん古い動画を(笑)。私も「ここまで」というところまで造形したら、いったん焼きますよ。で、そこからまたスカルピーを盛り付けて再開します。

なるほど、ここまで来たら、いったんセーブ。さながらロールプレイングゲームのこまめにセーブと同じ感じですね。

キカイ

竹谷

そうそう、まさにそれです(笑)

工房内に置かれた魚の骨のオブジェ

竹谷さん、こ、この魚の骨は。。。

キカイ

竹谷

これは博物ふぇすてぃばるだったか、ミネラルショーで入手しました。

ほー、そういったイベントにも行かれるんですね。

キカイ

竹谷

そうですね、材料探しに。たまたま会場で松村しのぶさん（※5  記事末尾参照）にお会いした後にそのブースに行ったら、店主が松村さんの話をしたので「あっ僕さっきお会いましたよ！」って言ったら安くしてくれた上に、おまけ（右の牙の生えた魚の骨）までいただきました(笑)

松村さん様様ですね(笑)

キカイ

竹谷さんは無類の骨好きで、そういった実際の生物の形状から造形へのヒントを得らるようです。

竹谷さんのお父様が北海道で漁師&猟師さんだったということで、実際の生物の姿（もちろん息絶えた後の姿も）は、竹谷さんの原風景の中にあるのだと思われます。

楽しいと思えることに、無駄はない

お話をしながらも、バリバリとエポキシパテを削り続ける竹谷さん。

竹谷

…だめだ、止まんない(笑)　やはり何も考えず、ただただ彫刻刀で何かを彫るのは楽しいですね。ほら、ウルトラ怪獣のようなテクスチャーが出来ましたよ。

うわ、なんかこんな怪人いたような(笑)　でも案外そういった感じで彫ったり削ったりしていた時に画期的な表現方法が生まれたりするのかもしれないですね。

キカイ

竹谷

楽しんでやっていれば、おのずといいものが出来ると思います。楽しいと思えることに、ひとつも無駄なことはないですよ。

シンプルですけど、力強いお言葉ですね。本日は誠にありがとうございました！！

キカイ

竹谷

こちらこそ！