この作品を制作するにあたって

下絵～転写

まずは参考資料を見ながら下絵を描きます。

はがきのサイズは148×100mmです。

下絵に色を付け、どう版に分けるか考えます。

下絵にトレーシングペーパーを乗せ、最終的なデザインを描きます。

黒で摺るところと色を乗せるところを分けます。

版木にカーボン紙（今回はわかりやすいようにオレンジ使用）を乗せ
色が乗る部分を版木に移していきます。

黒い部分も同様です。

黒くなる部分

色がつく部分

版木を彫る

まずは黒くなる部分から彫ります。
線の周りを三角刀で彫ります。

残したい部分の周りを彫ります。
この鉛筆で囲った範囲を彫っていきます。

広い部分を大きめの丸刀で彫ります。

余白の外周は小さな丸で深めに彫っておきます。
ここが浅すぎると摺った時に絵具がついてしまうためです。

余白が彫れました。

深さの目安はこれくらいです。
あまり深すぎると版木に穴が開くので注意！

大まかに彫れたら細かいところを彫っていきます。
3mmくらいの隙間は丸刀小サイズで。

残すところを飛ばさないように気を付けましょう。
刀を持った反対側の手の指を刃に添えると安定します！

線の周りは絵の具がつかないように深めに。

さらに細かいところは印刀を使います。
まず印刀を彫りたいところに45度くらいの角度で入れます。

反対側から同じく45度くらいの角度で刃を入れて彫ります。

印刀が難しい場合は三角刀を使ってもいいですね。

細かいところが彫り終えたら、平丸で余白のなみなみをサラエます。

ここでひと手間。
余白の外周、平面と凹みの境界線にエッジが立っていると、摺った時に跡が残ります。
その跡が残らないように、平丸で面取りしてあげましょう。

黒い部分の版が彫れました！

では同様にして、色版も彫っていきましょう。

狭いところは丸刀の小サイズを使います。
外側から内側に向けて彫ると、彫りすぎによる事故も軽減します。

色版も彫れました。

 

見当を彫る

摺り紙の位置を決めるための「見当」を彫ります。
ちなみに「見当違い」という形容動詞はこの版画の見当が語源となっています。

画像右下のカギ見当（L字）と左下の当て見当（直線）の両端を丸刀大で落とします。

見当の赤い線に印刀で切り込みを入れます。

平刀でハガキの厚みほどの彫りを入れます。
（当て見当も同様です）

見当も出来て、彫りが完了です。

ハガキを置くとこんな感じです。

摺る

摺りの前に、はがきを湿らせておきます。
新聞紙を霧吹きと水刷毛でまんべんなく湿します。

湿した新聞紙にはがきを挟み、湿めり気を与えておきます。

摺りにはこのような道具が必要です。

絵具を混ぜて色を作ります。

少し赤身の強い黄色を作りました。
紙に塗って様子を見ます。

版木に霧吹きをかけ、湿らせます。

版木に絵具を運び筆で乗せます。
また、近くに一粒大の糊を置きます。

ハケで円を描くようにして全体に摺り込みます。

摺る直前に、ハケを繊維に沿わせるような感じで軽く撫でます。

カギ見当にハガキの角を当て、当て見当にハガキの側面を当てて置きます。

ハガキの上に1枚紙（トレーシングペーパーがおすすめ）を置き
バレンで円を描くように摺ります。
ここで注意するのは、バカヂカラで摺らないこと。
バレンの面でじっくりと摺るようなイメージです。

きれいに摺れましたね。

まずは色版をたくさん摺っておきましょう。
摺ったら紙が乾かないようにまた湿らせた新聞に挟んでおきます。

黒も同様に摺ります。

合わさるとこんな感じになりました！

こちらもたくさん摺っておきます。

テクニック　～グラデーション～

黄色く摺った部分に、グラデーションを入れます。
立体感を付けたいので暗めの茶色を乗せます。
また、グラデーションをしたい範囲に付くよう糊を乗せます。

ブラシを使ってグラデーション部分を摺り込みます。

絵具が当たってほしくない部分には何かしらガードを乗せてカバーしましょう。

何枚か試します。

いい感じに立体感が出ました。

黒の版を摺り重ねます。

比較です。
左が2色、右が3色摺りです。
色が1色増えるだけで印象がとても変わりますね！

最終的に文字も追加して、完成です。
素敵な年賀状ができました！

～終わり～